徘徊・帰宅願望には、その人なりの理由がある。
徘徊や帰宅願望は、認知症の周辺症状(BPSD)です。それをしている本人は何か理由があってそういう行動をしています。
私が施設で働いていた時に、よくあるケースが家に帰りたいという帰宅願望です。帰りたいと本人が言っているのに、無理に止めてしまうとそりゃ逆上します。余計に自分のしたいことを拒んでくる嫌なやつと認識してヒートアップしてきます。なので、否定はせずに、うまく話しを合わせながら、かわしながらやっていくのが、関わっていくコツになります。
徘徊したり、帰宅願望がある人っていうのは、各個人で、それをする理由は違ってきますので、ほんとにいろんなケースがあります。
毎日必ず、家に帰りたいと言ってくるが、すぐにあきらめる人もいるし、毎日言ってくるわけではないが、たまに強烈な帰宅願望をかましてくる人もいます。
認知症で徘徊や帰宅願望を訴える人は、昔の記憶が今の現実と重なってくるためという症状がでますので、そういうモードに入っているときに、それを止めてくる人がいたらそれは怒ってしまうのは当然です。接する側はこういった背景を知った上で付き合っていかなければなりません。
徘徊~施設を歩き回るおばあちゃん!
私が施設にいるときは、とにかくフロアの廊下の端から端まで何度も歩くという、おばあちゃんがいました。この人はもともと若いころから、歩いて買い物などどこでも行く方だったようで、遠い距離でも苦にすることなく歩いている方でした。
年をとってからもかなりの距離を毎日歩くのが日課だったようです。なので、周りからみれば不自然ですが、本人は若い頃していたように、日課として施設を歩いている意識なのでしょう。
帰宅願望~家に帰るモードが止まらないおばあちゃん!
私が施設で働いていた時の経験で、そのおばあちゃんは、普段から帰宅願望はまれにあるのですが、いつもはさほどありません。ただ、一旦そういうモードになった時は、かなり強烈な訴えをしてきます。
その時は、いきなり大きいかばんに荷物をいれて施設を出ていこうとされました。いつもなら、ご家族に連絡すれば落ち着くのですが、この時ばかりは出たいモードがマックスの時でそれも効き目がなくなります。もうお構いなしに出ていこうとします。もちろん一人では危ないので、車で、行きたいといっているその場所まで送ることとなりました。
そこは以前住んでいた自宅ではあるのですが、直近で住んでた家ではなく、ちょうどその方が30~60代ぐらいに、今は無きご主人と住まれていた家です。まだあるのはあるのですが、もう誰も住んでいないところです。
家の形は残っているのですが、廃墟みたいな感じです。ただ、そこからずっと離れようとはしませんでした。もう根競べです。
その時は2時間ぐらいはそこから離れようとはしませんでした。ちょうど夜にもなってきて、ふと「おなかはすいてませんか?何か食べにいきませんか?」といったら、その方もお腹が減っていたのか、その言葉が功を奏して立ち上がり、なんとか車に乗ってもらい、施設を目指しました。本人はちょっと納得はいってない感じでしたが、なんとか施設に戻ることができました。
こういった徘徊や帰宅願望は、高齢者施設では、日常茶飯事に見られることと思います。
認知症の薬も効きすぎには気をつけないと!
認知症の周辺症状や進行をなるべく防いだり、また、あまりに攻撃的であったりした場合は薬が有効となってくるでしょう。
薬には、アリセプト、メマリーなど現在いろんな薬が開発されています。
私が経験では、徘徊、帰宅願望や攻撃性のある方に、リスパダールが処方されるのをよくみてきましたが、効きすぎると、目がうつろになり、ふらつきも出て、活気も無くなったりもしますので、やはり主治医は、その人にあった分量は大切だなと思うところです。